やさしいベッドで半分死にたい【完】

耳元に、いつだって囁き落としてくれる。

私のことを咎めるような言葉を話しているはずなのに、どうしてかとてもやさしい。いつも見つめてくれていたのだと思い込んでしまうには、十分な言葉だった。


泣きたくなってしまう。

すべてから見放されて、何一つ掌《てのひら》に残らなくなってしまったようにさえ思えた。けれど、花岡は決して私を見捨てたりしないで、こうして、ちっぽけな私を抱きしめてくれている。

どれだけの奇跡だろう。

流れ星に祈るような無謀さで、何度でも確かめてみたくなってしまう。

私はどうしてこんなにもずるい人間なのだろう。


はやく離れなければならないことはわかっているのに、結局しがみ付きたくなってしまう。

今日だけ。今日一日で、終わりにしよう。


もう何度も考えている呪文を胸の奥で唱えて、泣きたい瞼に力を込めた。


「無理してないですよ。南朋さんの眠りを妨げるほうが嫌です」

「そうか。それなら継続していい」

「ええ?」

「周が寝てるか、確認しないと落ち着かねえんだよ」


ぎゅっと頬を摘ままれる。

花岡は、特に恥ずかしがることなく私に告げて、「もういいだろ」と話を切り上げてしまった。あっさりとベッドから起き上がって、唖然としている私に手を差し伸べてくれる。


「俺が周の側にいないと、勝手に心配になるだけだ」


聞こえないふりをし続けることに、限界を感じている。
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