やさしいベッドで半分死にたい【完】
朝食というにはかなり遅い時間になってしまった。
着替えを済ませて、花岡に連れられるままに花岡の叔母の家までたどり着く。遅れてしまったのに、いつもと同じくやわい笑顔で迎え入れてくれたその人は、今日も豪華な朝食を振舞ってくれていた。
いつも食べきれないくらいに乗せられているのに、すこしでも残しそうな素振りを見せると、花岡が横から掻っ攫っていってしまう。
叔母にあたるその人は、花岡の素行に眉を顰めたりするような人ではないし、私が呆気に取られている間に、すべてが終わってしまっている。
いつもそうだ。
まぶしいくらいにやさしく微笑んでいるおばあさんは、まるで私と花岡の姿が微笑ましくて仕方がないとでも言い出してしまいそうだ。後ろめたいような、心許ない気分で目をそらしてしまう。
「今日のお昼はどうするんだい」
「すこし出るから必要ない」
「そうかい。じゃあまた明日だね」
「ああ、世話になる」
ぽろぽろと繋がる会話に居心地が悪くなってしまう。
はっきりと聞こえるようになってきている。たぶん、ほとんど正常に働くようになってしまったのだろう。どうして素直に喜べないのか、答えを探すことを拒んでいる。