やさしいベッドで半分死にたい【完】
「周」
囁き落とされる声のやさしさで、泣き出してしまいそうだ。こんなにも汚い。あなたに見つけてもらえたころの私には、もう、戻れそうにもない。
「機嫌を直してくれないか」
うっとりとため息を吐き出したくなるくらいにあまい声だった。しっかりと耳元に囁かれて、瞼をきつく瞑っている。
窓越しに見ても、たまらず愛を告げたくなるようなやさしさだっただろう。見る資格もない。あなたに愛されるような綺麗な人間じゃない。
「こっち、向いてくれ」
どうして懇願するみたいに、囁いてくれるのだろう。胸がしびれて、壊れてしまいそうだった。
こなごな、ばらばら、どんな音だろう。
胸を押さえてうずくまってしまいたい。
「あまね」
もう一度花岡に呼ばれてしまえば、あっけなく顔が振り返ってしまった。すぐ近くで、花岡の瞳がゆるむ。
「不機嫌では、ないです」
「そうか。それはよかった」
「急に変なことを言うのはやめてください」
「変なこと?」
わざと私の口に出させようとしているのは一目瞭然で、すこしふざけたような人の胸に恐る恐る触れた。
意地悪を叩くようにと思って、手を軽く触れさせたのに、あっけなく大きな指にとらえられる。まるで私の行動なんて、すべて知られているみたいだと思った。