やさしいベッドで半分死にたい【完】
「4年前だったか。突然復活したんだ。それまで消息不明で、眞緒……、弟はかなりショックを受けていた」
「へえ、そんなにお好きなんですか」
「叔母の家の眞緒の部屋に行けばわかる。鬱陶しいくらいのファンだった」
「それで、南朋さんもすきに?」
「まあ……、それなりにな」
「今日、眞緒さんには、お会いできますか?」
興味津々で問いかければ、花岡が一度目を丸くしてから、苦笑して頷いた。
「弟に会っても、何も面白いことはないが……」
「私は楽しみです」
「そうか」
穏やかな笑みで、私の髪を撫でた。いつも、声を吹き込む耳に髪をかけてくれる。くすぐったいような温かさに目を細めてしまった。
「そのアーティストが、実は眞緒の職場の先輩だったらしい」
「えっ」
吃驚して思わず花岡の顔を見た。同じように私を見ていたはずの視線が後ろへ流れる。その先を追って振り返れば、絵本から飛び出してきたような甘い顔立ちの男性がこちらに手を振っていた。
「眞緒」
「えっ」
さっきから驚かされてばかりだ。あっさりこちらまで来た男性は、後ろに美しい小柄の女性を伴っている。
「なんだ、もう来てたんだ。あ、紹介してなかった。彼女、西谷可憐」
ためらうことなくつぶやいて、花岡に紹介している。花岡の弟、眞緒は、あまり顔が似ていないようだ。
そっくりな顔立ちだと思い込んでいたが、まったく違った系統らしい。
二卵性双生児なのかと今更知って、納得している間に全員の視線がこちらへと向かっていた。
「ナオ、彼女?」