やさしいベッドで半分死にたい【完】
すべてが聞こえていないふりをするには、重たすぎる。
『……いや』
言い淀んだ花岡の声が、耳に反響し続けている気がした。
すこし遠くのほうに座っている二人は、当然のように頬を寄せ合っている。きっと、私のように耳に囁かなくとも聞こえるだろうに、それが当たり前のように笑いあっていた。まぶしくて、目が潰れてしまいそうだ。
「あんな感じで、騒がしい」
「……あんまり、似ていないんですね。私、すっかり南朋さんに似た男性が現れると思って」
「ああ、そうか。二卵性なんだ。顔は眞緒が母似で、俺が父似だ」
「ああ、眞緒さん、すごくきれいな顔立ちですもんね」
たしかに中性的な顔立ちだと思う。花岡もうつくしい顔立ちだが、鋭い眼光はどちらかというと男性的だ。
納得していれば「隣が彼女らしい」と付け加えられた。知っていると言うわけにはいかない。言葉を呑み込んで、「そうなんですね」と声を返していた。
「眞緒はああ見えて結構遊び歩いていた」
「……そうなんですか? じゃあ、なんというか、今の方をとても大事にされているんですね」
どう見ても、彼女以外には目が向かないような顔をしている。心底大事にしているのだろう。見ているだけで伝わってくるほどだ。