やさしいベッドで半分死にたい【完】
「ayaさんのファンなんですか」
心の底から、そうであったら嬉しいとでも言いだしそうな顔をして、問いかけられた。
とつぜんの声にどぎまぎして、ちらりと奥の扉を見つめてしまう。
私はどうしようもなく悪いことを、しているのだ。何度も思い返していたくせに、はっきりと自覚させられてしまった。
「あの、あなたは……?」
「あ、ayaさんのファンなんです。まさか藤堂さんもそうなのかと思って、勝手にうれしくなって話しかけてしまいました。驚かせてすみません」
きらきらとかがやく星のように瞳を輝かせていた。私の正体をあっさりと見破って、とくに騒ぎ立てることもなく、当然の事実として扱っている。
私よりも、ずっと、この下のステージに立つ人を心待ちにしているのだろう。視線がひっきりなしにステージに向いているのがおかしかった。
「私、実は聴くのははじめてで……、連れてきてくれた方が、ファンなんです」
包み隠して話せばいいものを、なぜか口をついて出てしまった。
あまりにもまっすぐで――いつかの日に、自分に向けられていた誰かからの視線のようだから、きっと、嘘をつきたくなくなったのだと思う。
ふいに花岡の瞳が浮かんだ。じくりと胸が疼いて、声が絡まってしまう。