やさしいベッドで半分死にたい【完】
スムーズに道を進んでいく。
流れる景色を見つめながら、綺麗に離れてしまった花岡の指先の熱に、胸がしびれたりしている。
花岡は、私が思う以上に愛にあふれた人なのかもしれない。思えば常に私のことを考えてくれている奇特な、いや、まっとうなマネージャーだった。だから、どこまでも迷惑をかけ続けてきた。
記憶の中にある貴女とも、花岡南朋という男性とも違う人のように見える。
私を見つめる瞳には、少し憧憬のようなつよい光が込められているような気がして、息が止まってしまいそうになる。
花岡が私の文通相手で間違いがないというのであれば、彼はわたしと出会うずっと前から私のことを知っていたことになる。
はじめて顔を合わせた時に「初めまして。これからマネジメントをすることになりました」と挨拶して綺麗に頭を下げたあの日の青年は、真っ赤な嘘をついていたことになる。
でも、言えるわけもないか。
一人で納得して、ハイウェイに乗り上げた車の行く末をただ見つめていた。
どこへ向かうのだろう。
少なくとも、飛行機を使うつもりはなさそうだ。もしかすると、このままこの国から連れ去られてしまうのかとすら思っていた。