やさしいベッドで半分死にたい【完】
何度も耳元に囁かれた声が鳴り響いた気がした。
胸に火が灯るような感覚で、あたたかい何かが、こころのうちに、流れ込んでくる。たいした発言をしたつもりのない人が、いっそう暗くなり始めた照明を見上げて「楽しんでください」と笑って遠ざかってしまった。
もしもあのまま二人でいたら、泣き出してしまっていたかもしれない。予感があった。
暗がりで、ライティングされたステージを見つめている。
何も考えないようにしたいのに、頭のうちで、花岡の声が鳴り響いていた。どうしてこんなにも熱いのだろう。何一つ返せない私をいつも大切にしてくれている。その腕のやさしさも、胸のあたたかさも、声の調子も、すべて刻み込まれてしまった。
つよく在れない私のことを抱きしめて、もうやめていいとまで言ってしまうような人だった。けれど、きっとずっと、気が遠くなるくらいに昔から、私の音楽を愛してくれていたのだろう。
「周?」
耳元に囁かれて、すぐ横に座り込んだ人の瞳を見つめた。どこまでも大切にされている。私が、藤堂周だったからこそ、出会えた人だ。
「どうした?」
「いえ、南朋さん、間に合ってよかった」