やさしいベッドで半分死にたい【完】

無理をさせてしまっている。もうずっと、私の隣にあるだけで、花岡は重たい荷物を抱えてしまっている。唐突に現実に押し戻された。

――もう、返してあげなければならない。


冷えた指先は、とっくに感覚をなくしてしまっていた。こころみたいだ。まるで死んでしまっている。

結局、どんなに大切にしてくれていても、どんなに逃げ出す口実を作ってくれていたとしても、私は私であることをやめることなどできない。

花岡のやさしさを抱えて、やり続けるしかない。

絶望のような結論に、擦り切れた崖の頂上に押し込められたような気がする。ばかばかしい。もうずっと前から落下寸前で立ち尽くしていた。

やさしい夢を見た。きっと、それだけでも幸運だった。


何か言葉を返している花岡が、ようやく電話を切る。

ため息が聞こえた。

ひどく疲れたような響きに、勝手に胸が壊れてしまいそうになる。私には、一度として現実を教えようとしなかった。ひた隠してくれていた。その裏に、どれだけの努力があったのだろう。


もう、十分だ。


細やかな決意をして、足を踏み出している。震えてしまいそうな体をどうにか叱咤して、花岡の前に立った。

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