やさしいベッドで半分死にたい【完】

決して結ばれることのない、みじめな恋だった。


「自分で……、歩けますから」


言い訳のように言えば、花岡が眉を顰める。くるしそうで、息が壊れてしまう。こんなにも大切にしてくれているのに、私はどうしてひどいことばかりを言ってしまうのだろう。


ただ、大切にしたいだけだ。

泣きたくなって、背中を向けてゆっくりと歩く人の後ろに続いている。その歩みがしっかりと私の歩調を覚えてくれている。どうしてこんなにもやさしいの。

泣き出したい夜だった。

こんなにもやさしい世界で、私は、誰よりも大切にしたい愛を傷つけている。

花岡に、これ以上くるしい想いをさせたくなくて、後部座席に乗り込もうとしたところでやんわりと腕を掴まれる。

遠慮がちな指先に、今度こそ心音がばらばらになってしまった。


「俺は間違ってないか」


静かな声だ。

夜の静寂(しじま)に触れて、私だけに確かめる音だ。決して他の誰かに干渉させない。私だけ、私の答えだけを求めていた。

他の誰でもない、私を尊重しているのだと言いたい音だった。

振り返ることもできずに、俯いている。花岡は、一度として間違えなかった。間違えがあったとしたら、私なんかに手を差し伸べてしまったことだろうか。それすらも、私が悪い。

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