やさしいベッドで半分死にたい【完】
なくほどすきだよ、いまでもずっと
愛の夢のような日々だった。
うまく言葉を繕えないまま、扉を閉める。最後の最後まで、私の瞳をじっと見つめてくれていた。
借りた服を着るのはやめた。はじめに着てきた服に着替えてお風呂場から出てきたら、花岡は一度声を詰まらせて、先を歩き始めた。
『もう、聴こえるようになったし、たぶん、うなされることもないです。ご迷惑をおかけしました』
遠ざける言葉だけは、簡単に口をついて出る。真剣な瞳で、弱い部分に触れられるのが怖い。今にも倒れこんで助けを呼びたくなってしまう。これ以上、花岡のやさしい腕に抱きしめられたら、嘘をつき続けられない。
静かに近づけられる指先を見て、反射的に一歩後ろへと体を引いた。
何も言わないまま指先がおろされるのを見て、たまらなくこころがくるしくなる。肺の奥のほうがじくじくと痛んで、いつまでも治らない傷を負ってしまったみたいだった。
ふらふらとベッドにたどり着いて、冷たいシーツの上に倒れ込む。
一人には十分すぎるくらいなのに、二人には狭い。昨日、花岡が眠っていた痕跡を集めようとして、ひやりと冷めたままの白に指先が触れた。こんなにも冷たい。