やさしいベッドで半分死にたい【完】
きらきらと瞬く星は、あの日ボートの上で見上げた星空みたいにうつくしくて、どうしてか、胸が切なく痛んでしまう。
もうずっと前から呼吸はくるしくて、花岡の隣でなければ呼吸もできないような人間になってしまったのかと笑えてきた。取り返しがつかなくなる前に離れてしまおうなんて思っていた。
もう、取り返しなんて、とっくにつかないところまで深く沈んでしまっていた。
音はない。いつも必死に頭に浮かべていた、拙い悲鳴のようなメロディは綺麗に消え去って、ただ秋の夜の静かな旋律だけが流れ聴こえていた。
いくつもの花岡の声が聴こえてくる気がする。
『あそこは森山の家だ』
『昔はよく帰りにバイク乗って……』
『春には桜が咲く』
『明日は川でも行くか』
知らないものをたくさん教えてくれた。すべてがかがやかしい光になって、私の胸に住み着いている。
はじめて一人で歩くのに、どこかあたたかい。花岡にそっと抱きしめられているような気さえしてしまった。
「重症だ……」
一人つぶやいてみれば、簡単に耳に音が届いてしまう。静かな夜だ。
「あまねちゃん?」
後ろから声がかかって、わずかに肩が上ずってしまった。ちらり振り返れば、何度か出会ったことのある人が、目を丸くしている。
もうずっと前から呼吸はくるしくて、花岡の隣でなければ呼吸もできないような人間になってしまったのかと笑えてきた。取り返しがつかなくなる前に離れてしまおうなんて思っていた。
もう、取り返しなんて、とっくにつかないところまで深く沈んでしまっていた。
音はない。いつも必死に頭に浮かべていた、拙い悲鳴のようなメロディは綺麗に消え去って、ただ秋の夜の静かな旋律だけが流れ聴こえていた。
いくつもの花岡の声が聴こえてくる気がする。
『あそこは森山の家だ』
『昔はよく帰りにバイク乗って……』
『春には桜が咲く』
『明日は川でも行くか』
知らないものをたくさん教えてくれた。すべてがかがやかしい光になって、私の胸に住み着いている。
はじめて一人で歩くのに、どこかあたたかい。花岡にそっと抱きしめられているような気さえしてしまった。
「重症だ……」
一人つぶやいてみれば、簡単に耳に音が届いてしまう。静かな夜だ。
「あまねちゃん?」
後ろから声がかかって、わずかに肩が上ずってしまった。ちらり振り返れば、何度か出会ったことのある人が、目を丸くしている。