やさしいベッドで半分死にたい【完】

「も、りやまさん?」

「あれ、声……」


久しぶりに会うような気もするし、実はそうでもないのかもしれない。森山は、手に白いビニル袋を持って、呆けた顔をしていた。

張り詰めて、もう一度泣き出しそうになっているくるしい呼吸を押し殺して笑ってみる。


「……ようやく、聴こえるようになりました」

「えっ……! おお、おめでと~! え、マジ? 声聞こえてる?」

「はい、ご迷惑をおかけして」

「いや、全然! よかったな~。ナオ泣いて喜んでんじゃね? どこ行った?」


当然一緒にいるものと思われている。その言葉にどう返せばいいかわからずに曖昧に笑ってみれば、何度か瞼を瞬かせた人が、おおげさなくらいに笑みを浮かべた。


「ほうほう。なるほど。周ちゃん、抜け出してきたってわけだ?」

「えっ……、えと」

「いやあ~、あいつベッタベタしてうざいもんな! よしよし。今からナオん家で飲むから、一緒においで~」

「えっ? 今から?」


吃驚しているうちに、背中を押される。ぽんと軽く触れられて一歩踏み出せば、満足そうな森山が手を招いて先を歩き始めてしまった。


「いいんですか? こんな時間に」

「あー、大丈夫! いつもだから。ばあさんも結構いける口よ?」

「え、おばあさんが?」

「ババアが一番若えの」

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