やさしいベッドで半分死にたい【完】
言葉にならないまま、必死で首を横に振った。
そうじゃない。ひどいことをしたのは、私のほうだ。
ずっと、故郷がほしかった。帰り着ける場所がほしくて、心底あこがれていた。何度か、花岡への手紙にも打ち明けていた。
「ばあちゃんに言ってみい。悪いなおちゃんは尻叩いてやるから」
まるで、本当の家族みたいに大切にしてくれている。目が合ったら、しわしわの指先で、頬を撫でてくれた。
花岡と同じく、やさしい指先だった。どこまでも胸が熱くなって、堪えられない。
「南朋さんは……、わるく、ないです」
「本当かい? なおちゃんはねえ、やんちゃが過ぎるから、あまねちゃんみたいな綺麗な子、もったいねえ」
「そんなこと、ないです。いつも、やさしいです」
こんなにもやさしいものに触れさせてくれた。全部あたたかかった。この町で出会うすべてがやさしくて、あたたかくて、きらきらと輝いている。
宝石みたいな思い出になった。全部、花岡が捧げてくれた。
「そうかい。あまねちゃんのこと、よっぽど好いてるもんね。こんな町まで連れてくんだから。……耳はもういいのかい」
「……はい。もう、すっかり」
「そうかい。いかったね。ほれ、すこし上がって行き? あんた手ぇ冷たくて心配だわ」