やさしいベッドで半分死にたい【完】
微笑んで、居間へと導いてくれる。明るい居間では、アキオと森山が騒ぎ立てていた。
私が入ってきたのを見て、互いに隣の席を指して「こっち座って」と言ってくれる。泣きたいのか笑いたいのか、わからなくなってしまった。
鼻声のまま笑えば、当然のようにおばあさんの横に座らされる。
「ババア!」
「あんたらうるさいよ。いっつも勝手に上がり込んで……」
呆れたような物言いに、二人が「なんだと?」と眉を寄せている。軽快な口論が鳴って、とうとう笑い声が上がってしまった。
「あ、周ちゃん笑った!! めっちゃかわいい……! ファンっす!! 超絶ファン!」
「アキオうるせえ」
きっと、一人暮らしのおばあさんを心配して、こうして夜は様子を見に来るのだろう。やさしい人たちだった。おばあさんも気づいているから、つよく言ったりしない。
どこまでもやさしくて、胸が詰まる。
花岡も知っているだろう。こうしてここに来れば、仲のいい人たちと楽しい夜を過ごすこともできた。それなのに、花岡は私を抱きしめてくれていた。どんな奇跡だろう。
気づけば気づく程に遠くまぶしい。
「傘、貸していただいてありがとうございました。すっかり耳の調子は良くなって……」