やさしいベッドで半分死にたい【完】

「階段急だから気ぃつけてね~」

「は、い」


急こう配の階段をのぼりきったら、森山は当然のように右側の部屋を開いた。まるで何度も来た部屋に入るように、声もかけずに足を踏み入れて、電気をつける。


「あ……」


それが花岡南朋の部屋だとわかってしまったのは、どうしてだろう。

さっぱりと片付けられた部屋には、大きなラックが置かれている。中には、びっしりとCDが敷き詰められていた。自然と、引き寄せられるように足が動いて、目の前で止まる。


「全部、周ちゃんのやつ」


おかしそうに笑っていた。

森山は、いつから花岡がこうして私が演奏する音源を集めるようになっていたのか、きっと知っているのだろう。振り返れば、眉を下げた人がこちらを見つめていた。


「ナオはさあ、結構グレてたんだよ。俺が言うことじゃねえけど……。まあ手ぇつけらんねえ不良で、育児とか放り出して好きに生きてるような親に反発心があったんだろうな~。警察沙汰ばっか起こして、ババアに迷惑かけて」

「花岡さんが……?」

「そうそう。あいつがいい子にしてんの、周ちゃんの前だけだからね。……周ちゃんは覚えてないだろうけど、あいつ、高3のときに周ちゃんに会ってるんだよ」

「え……?」

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