やさしいベッドで半分死にたい【完】
どれだけ大切にしてくれていたのか、一目でわかってしまった。度々眺めてくれたのだろうか。思い返しながら、メールを打ってくれたのだろうか。
ぽろりと表紙に涙が落ちる。綺麗な染みになる前に指先で拭って、めいっぱい抱きしめた。
やりたいことなら、ここにある。
泣くほど好きだった。あなたが、私を大切にしてくれるなら、もう一度思い出せる気がするんだよ。
呼吸を整えた。
夜に、愛おしいメロディが流れてくる。誰にも消させたくない。誰かに、花岡に、たしかに聴き取ってほしい音だった。あなたが愛する私を、もう一度生きなおしてみたい。
指先は震えなかった。
悲鳴のような音も聞こえなかった。ただやさしくて、あたたかい音が耳元に囁きかけてくれている。
音にしたい。音にしたい。音楽にしたい。音楽に触れたい。
こみ上げる思いで、やっぱり泣きたくなっている。必死で指先を動かして、泣きながら書き殴っていた。
呪いでも呪縛でもない、ただ、音楽が好きだ。あなたが大切にしてくれる音が好きだ。
好きだから離れたくなくて、くるしんでいた。
音楽を嫌いになりきれない私でよかった。いつも泣いてばかりだけれど、それでも好きで、続けていられてよかった。
花岡に出会えたこの生き方を、今、ようやく肯定できた気がする。こんなにも近くに輝いていた。
全部あなたに、捧げてしまいたい。