やさしいベッドで半分死にたい【完】
私がずっと求めていたものを、花岡はいつも捧げようとしてくれていた。もうずっと、何年も前から、考えてくれていた。
「帰りたい場所、見つけました」
「そうか?」
気づくのに、こんなにも時間がかかってしまった。
背中に腕を回して、顔を見上げる。
故郷も、戦いたい場所も、たくさんこの胸にある。私のこころでうつくしく光り輝いている。
そのすべてのかがやきをもたらしてくれる人が、ただ一人だけ存在していた。
「南朋さん」
「ん」
「南朋さん」
「なんだ」
「はは、私、南朋さんのところに、帰ってきたいです」
密やかに囁いて、花岡の瞳をじっと見つめる。
深淵《しんえん》に星がきらめいていた。あの日、ボートの上で見たよりももっとうつくしい光だ。
見つめあって、途切れる。
瞼に邪魔されてしまって、頬に花岡の指先が触れたら、同じように視界が途切れた。
やさしい熱が、唇に移される。答え合わせみたいにやさしく触れてくれた。
「なおさ、」
「迷ったら、何度でもここへ戻ってくればいい」
とことん甘やかす人が、そっと囁いてくれる。この世の秘密を教えてくれるようなやさしさで、私のこころに約束してくれた。
うつくしい人。