やさしいベッドで半分死にたい【完】
どうしてそんなことを疑っていると思われたのか、よくわからなかった。首をかしげていれば、髪を乱すように触れられる。視界の先で、花岡が何かを口走っている。
「(墓穴掘った……)」
「あの、何て?」
恨めしそうな目で見つめられて、瞬きを繰り返している。
「そんな怖い人だなんて、思ってない、ですよ」
一言添えてみれば、苦虫を噛み潰したような顔の人がぐっと顔を寄せた。
「何でもない。忘れてくれ」
ぐちゃぐちゃに乱された髪を整えている間にまた手を引かれる。
もしかすると、本当に脅して借りたのだろうか。一瞬、花岡が顔も知らない誰かに高圧的な姿勢で向かっていくところを想像してしまった。背が高い人だし、顔立ちの整っている人の顰め面は迫力がある。私が脅されたら、まずひとたまりもないだろう。
想像を蹴散らして、まっすぐに歩いていく人の後へ足を動かすことだけに集中することにした。
いくつかの教室を脇目に見ながら、廊下を進んでいく。
私と花岡しかいない。
しかも、私は淡色のワンピースを着ているし、花岡に至っては、深いグレーのニットに細身のパンツを合わせている。まったく学校には似合わない風貌のような気がして苦笑してしまった。