やさしいベッドで半分死にたい【完】
そらからのぞく、ひかりみたいに
シュートが入って年甲斐もなくはしゃいだのが、少し前のことだった。
花岡に指導された通りに20本近く打ち込んで、まぐれのような一投があたりを引いた。思わずわっと花岡に駆け寄ったら、花岡は、両手の掌を目の前に見せつけるようにあげてくれる。
よくわからないまま、同じように手を差し出して、触れさせる。どんな音がしていたのだろう。懲りずに気になった。
人生で初めて鳴らしたハイタッチは、私の耳に残ることなくはじけて消えていった。
すでに体育館は大きな照明に照らされてしまっていた。すっかり夜だ。もう、帰る気なんて一切なくなってしまっていた。
花岡もそうだろうか。そうだったらいいのに。ちらりと見つめたら、やさしく頭を撫でられた。
「飯、食うか」
「ごはん?」
「ああ」
来た時と同じように自然に手を握られた。指先がやさしく絡んで、ぴったりとくっついてしまう。そこで絡んでいるのが当たり前なのだと錯覚してしまうような温かさがあった。
繋がれたまま、階段を一段ずつ登っていく。
何階まであるのだろう。見た感じでは三階建てだろうかと思い込んでいた。二十四段の段差を上りきって、二階についたことを確認している間に廊下へと引っ張られた。
目的地は二階にあるらしい。