やさしいベッドで半分死にたい【完】
相変わらずやさしく囁いていた。声に頷いて、椅子に腰かける。正面ではなくて隣り合って座った人が、箸を持ったのが見えた。同じように箸を持って唇を開く。
「いただきます」
囁いた音は、どこまで響いていただろう。
隣を見なくとも、横に座ったやさしい人が、同じ言葉を唱えてくれていたような気がした。
小さなパックの牛乳と、揚げパンの組み合わせはよく似合っている気がするのに、なぜか味噌汁が付け加えられていた。不思議な組み合わせなのに、花岡は何も言わないから、これが普通のことなのだと理解する。
ちらりと見つめてみれば、もう半分以上を食べ終わっているようだった。物思いに耽っている時間が長すぎたのかもしれない。一人反省して、口に野菜を突っ込んでいる。
例えば小学生の花岡はどんな男の子だっただろうか。今まで一度も考えつかなかった問いかけを自分に下して、首をかしげたくなってしまう。
想像上の花岡でさえ、少しぶっきらぼうに見えた。けれど本当はやさしいひとだから、クラスで困っている人がいれば助け起こしてあげるのだと思う。――今の私みたいに。
「なんだ」
「わっ」
耳殻に声が刺さって、箸をテーブルにぶちまけてしまった。