やさしいベッドで半分死にたい【完】
さみしいよるには、あなたのねつを
羊を数えることに飽きてしまった。
体を起こして、柔いベッドの上に座り込んでみる。窓から差し込む淡いあかりは、遠くに光る街灯のようだ。
田舎の町なのだと理解するには十分すぎるくらいに長閑な風景が続いている。ベッドのすぐ隣のカーテンから手を放して、昔養護教員が使っていたような机に向かった。古びた椅子がある。座ってみれば、かすかに軋む音がした。
ここに来た宿泊客が書き込んでいくらしいノートを見つけて、ぱらぱらと巻くってみる。ほとんどがサークルや何かしらの遊びで訪れているようだった。この高校に通っていた生徒が来たことはあったのだろうか。
花岡が来るのは何度目なのだろう。慣れているようにも、そうでないようにも見えた。
花岡は簡単に動揺している姿を見せるような人じゃない。そこまで考えて、今日の出会い頭の花岡がひどく狼狽えていたことを思い出した。
眠れない夜は何度も訪れて、つねに私の額に寄り添っていた。
何かを成し遂げなければならないと思えば思うほどに逼迫して、頭が休まらない。そうして慣れのような不眠が続いたとき、花岡に勧められたメンタルクリニックの存在を思い出していた。