やさしいベッドで半分死にたい【完】
読み飛ばしたいくつかのメールの中に、無数の仕事の連絡が送られてきている。見ようと思えば思うほどに億劫になった。


疲れ切って、ふらふらとフローリングに転げる。

まるで転落する自分のようだ。

期待や称賛の数だけ荷物が重たくなる。応えられない己に気づいたとき、その恐ろしさで吐き気がしてくる。


瞼が重い。

そういえば昨晩もほとんど眠れなかった。だから、悪夢のような何かから飛び起きた時、世界から音が消えてしまったことに気づくまで、いささか時間がかかってしまった。


上下の瞼をゆっくりとこすり合わせる。

最悪の床に寝そべりながら、グランドピアノの三つ足をぼんやりと見つめていた。眠剤を飲んでから眠ってしまったほうがいいかもしれない。いくつか思考が浮かび上がって、そのまま散らばってしまった。

眠ればすべてから逃げ出せるのだろうか。


「そっか、逃げ出したかったんだ」


一人つぶやいて、ほとんど聞こえない音に思考が砕け散ってしまった。

『難聴が残ってしまう可能性もあります』

『メンタルクリニックにも通院されているんですね』

『何か大きなストレスが――』

< 5 / 215 >

この作品をシェア

pagetop