やさしいベッドで半分死にたい【完】
出口のない迷宮でさまよっている。
ふらふらと、真っ暗な道を歩いているはずが、前に進んでいるのか後退しているのか、上に向かうのか何を目的にしているのかもわからなくなってしまう。
たしかに、好きな和音があったはずだ。
どういう音を集めたいのかわからなくなってしまう。
両手いっぱいに抱えた音が零れ落ちて、散らばっていく。それを何とか拾い集めようと必死になっているうちにすべてが消えてしまった。
瞼が重い。くるしいことばかりが続いている。どうして逃げたいのに、逃れられないのだろう。
結局、書きつけていたメロディラインをぐしゃぐしゃに塗りつぶした。
無意味な音の羅列に疲れ切って、机に額を擦らせる。さらりと撫でつければ、指先が凸凹を感じた。机の上の表面に、何かが彫り込まれている。
相合傘の中に、知らない誰かの名前が彫り込まれていた。青春の一ページには、そういうワンシーンが潜んでいるのだろうか。
私の青春は、いつはじまっていつ終わったのか。すべてを捧げたものからも遠ざかってしまった今、何一つ手元に残ってくれないおそろしさで、自分自身が揺らいでしまいそうな気さえした。
重たい瞼を擦って、息を整える。
眠っても、きっとよい夢は、見られないだろう。