やさしいベッドで半分死にたい【完】
どうして歓迎されているのか、まったくわからない。けれど、何の悪意もなく私を大切にしてくれているのだとわかった。
手を差し出されて、意味も分からずに両手を出した。その手をぎゅっと掴まれて、慈しむように撫でられる。今度こそ、唇の動きが見えた。
「あまねちゃん」
私の名前を呼んでいる。
どんなにやさしい声だったのだろう。聞こえていたら、私はなぜか、泣き出していたかもしれない。
くるしくなって、押し込めるように笑った。「はい」と返事を返したら、目を見張ったかわいらしい女性がいっそう嬉しそうにしてくれた。
こんなにも素敵な女性と過ごしていたのだから、花岡のような魅力的な男性が育っても何の不思議もない。納得してしまうような人だった。
花岡のほうを見たおばあさんが、「なおちゃん」と口を動かしているのが見えた。
なおちゃん。
心の中で復唱してすこし笑っている。あまりにも花岡南朋という人にはアンバランスな響きだ。ちらりと横を見てみれば、さしたる興味もなさそうに、何か言葉を返している。
一人で心の中に花岡の名前をつぶやきながら、全員が食べ終わって、すぐに立ち上がるおばあさんに従うように私も立ち上がる。
その勢いを、花岡の指先に遮られてしまった。