やさしいベッドで半分死にたい【完】
声をかけてみれば、とくに疲れた様子のない人が頷いた。花岡はオフィス街にいても違和感のない人だけれど、こういう田舎にいても浮いたりしない。どこへでも馴染んでいける、たくましい人だと思う。
「花火とか、してたな」
耳に、少しだけ唇が触れた気がした。ばっと振り向いたら、真正面から瞬きを打っている花岡の表情にぶつかる。あまりにも過剰な反応だった。わかっていても、反応したあとでは遅い。
「すみません。ちょっと、くすぐったくて」
うまく音を届けられたのかわからないけれど、再び勝手に歩き出した私の後ろに続く人は、繋がれている手に、少しだけ力を込めているような気がする。
その行動の意味がわからない。ぐるぐると考えているうちに、もう一度吹き込まれる。
「俺だけになったか?」
確信していることを問いかける。意地の悪そうな声にもう一度振り返ったら、今度はしたり顔の花岡が立っていた。私の顔を楽しげに見つめている。こんな風にからかったりするのか。感心すらしてしまった。
「花岡さんは、結構、あっさりそういうこと言えるんですね?」
「そういうこと?」
「なんか……、かわいいとか」