やさしいベッドで半分死にたい【完】
どういうことなのか理解しかねて首を傾げたら、呆れたような、決意したような顔をして手招きされた。


「深夜にバイク飛ばして家帰らないようなクソガキだ」

「えっ、不良少年ですか? 全然見えない」


だから脅すとかなんとか言っていたのか。

急につながって、たっぷり考え込んでから笑ってしまった。どうしてそんなことを気恥ずかしそうに話したりしたのだろう。私なんて、外でバスケットボールをする集団にあこがれるようなさみしい人生だ。


「いいじゃないですか。こうやって、素敵なところを見つけて、大事にしていたんですよね。花岡さんらしい、大事にする生き方で……、私はすがすがしいと思います」


私なんかの言葉で励ましになるのだろうか。ただの感想文のようになってしまった。気恥ずかしい。

視線を逸らしたら、花岡の手が、私の指に触れた。


「はな、」

「(あまね)」


何かを囁いていたように見えた。けれど、視界の悪い夜の湖では、何一つ届かない。惜しい気分になって体を近づけたら、花岡の目がまぶしい何かを見つめるように細められた。


「もう少し進んだら、コスモスが見える」

「こすもす、ですか」
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