やさしいベッドで半分死にたい【完】
「好きだ」
「はい」
「ちゃんと聞こえてるか?」
「きこえてま、す」
「じゃあ俺が何て言ったか、言ってくれ」
「な、んですかそれ」
「藤堂に言われたらどんな気分か、体験できるかと思ったんだが」
「変なこと言わないでください」
「嘘はついてない」
軽やかな声に、音が詰まってしまった。何度でも愛を囁きかけてくれそうな人に心底参って、ぎゅっと胸を押した。
すこしもつよくない力であっさり離れてしまう。私の意思を尊重してくれるやさしささえ、にくらしく好きで、もうだめだ。
私の言葉なんかで喜んでくれるというのなら、いくらでも差し出したいと思っている自分に気づいた。胸の内で愛を囁いて、一人で首を横に振った。
こんなことを言ったら、ますますくるしくなってしまうだろう。
耐えられなくなって、必死で口を開いた。
おかしなことを口走らないようにと細心の注意を払って、声に出す内容を、どうにか記憶の箱の中からひっくり返して選んでいる。
「もう、今日の嘘をつかないやつはいいです。こんなこと続けたら、さすがに恥ずかしくて死んでしまいそう」
しどろもどろにつぶやいたら、花岡が肩を揺らしている。口元に手を添えているその人は、うつむきがちでも笑いをこらえているのだとわかった。