やさしいベッドで半分死にたい【完】
きっと、花岡のそばにいる生活は、かけがえのないものだろう。たとえ難聴が残ってしまっても、花岡は決して見捨てたりしない。いつだって私の耳に囁きかけることを怠らないだろう。素敵な予感があった。どこまでもうつくしい人だった。その背中で、常に守ろうとしてくれる。
それが、私の求める人生なのだろうか。
花岡は私が好きだと言って、自分以外を忘れてしまえばいいとたぶらかしたりしながら、私が考えて、選び抜くことを優先している。
四年前もそうだった。
あの日の花岡は、本当は私の行き先を、どうあるべきだと思ってくれていたのだろう。今更聞いたところで遅いと知っていたとしても、答えを聞いてみたいような気がした。
口を開こうとして、思いとどまった。
いつも私のやりたいことを尊重してくれている。きっとそれが、花岡の持つ答えなのだろう。
私がやりたいこと。
空に思い浮かべようとして、きらきらとはじけてしまった。
真っ暗闇に星が流れる。
やさしい記憶だ。音がなくても、大切にできる思い出をプレゼントしてくれた。どこをどう切り取っても素敵な人だった。不良少年だったことを隠そうとするようなおかしな人。
「花岡さんって、どんな不良でしたか?」
考えなければならないことから遠ざかった。私の質問に、花岡が少しだけ顔をげんなりさせている。
相当隠したい思い出なのだろう。
派手に騒ぎまわっていたのだろうか。今度森山に会ったらこっそり聞いてみようと決意して、教えるつもりのない人を笑っていた。