やさしいベッドで半分死にたい【完】
すっかり目が冴えてしまったのか、帰り道の車内では少しも眠くならなかった。
時間を見て、まだ二十一時を跨いだくらいの時間だったことに驚いてしまった。もっと遅い時間だと錯覚するくらいに暗い。「田舎はこんなもんだ」と言われて深々と頷いていた。
夜に外出をすることがあまりなかったから、東京以外に比較対象がなかった。たしかに街灯が少ないから、より星が綺麗に見えるような気がする。
移動時間は二時間程度で、やはりかなり遠くに位置していたのだと気づいた。行きの車内では、二時間たっぷり眠っていたのだろう。
今回もまた「眠ってていい」と言われたけれど、仕返しのように、窓に映る花岡の顔をじっと見つめていた。
途中でガラガラのファミリーレストランに寄って、花岡にオムライスをごちそうになった。
改めて何一つ持ってこなかった自分に驚いている。
あの部屋の冷蔵庫の中は、幸い何も入っていなかった。ほとんど食べる気力を失っていたと言ったら花岡は眉を顰めてしまうだろうから、情けない事情は黙っていることにした。
花岡に被らされた黒いキャップは、綺麗に店員の目をごまかしてくれた。
一番見えづらい席を指定した花岡は、本当にスマートな人だと思う。このファミレスに人があまりいないこともきっと知っていたのだろう。