シンデレラは、ここにいます。〜嘘恋〜
「恋々、温泉入る?
大浴場、2階にあるみたいだよ」
「雨登くんは?」
「オレは、いいや…
少しでも恋々と一緒にいたいから…」
ドキン…
雨登くん
そんなこと嘘でも言わないでよ
「やっぱり、ダメ!
緊張しすぎて、私…」
「ん…?オレと一緒にいたくない?」
「んーん…」
勘違いしてしまう
「あ!景色良さそう!」
窓から景色を見るフリをして
雨登くんから離れた
「なんか、見える?」
「んー…暗くなってきた」
まだ夜景でもなくて
夕焼けでもなくて
私の気持ちみたい
「夕飯までまだ少しあるね…」
「うん、夕飯楽しみだね!」
「恋々…話したい…
…
こっち来てよ…」
「うん…
ここと、そこでも話せるよ!」
「恋々は、この距離がいいの?」
「うん…
…
別に雨登くんが何かするとか
疑ってるわけじゃないけど…
…
雨登くんと違って
私、すごい緊張するから…
…
ドキドキしちゃうから…」
「たしかに…
すごい緊張してそうだね、恋々
…
さっきからそわそわしてる
…
じゃあ、夕飯の時間になったら起こして…
オレ、ちょっと寝る…」
雨登くんは
畳の上で仰向けになって目を閉じた
ここから見える横顔
この距離からでも
長くて整ってる睫毛が見える
雨登くん
少しでも私と一緒にいたいって言ってくれて
温泉にも入らなかったのに…
寝ちゃった
やっぱりホントは思ってなかったんだ
部屋が静かで
雨登くんの呼吸が聞こえる
それから私の胸の音
雨登くんとふたり
ずっとこの時間が続いたらいいのに…
嘘でもいいから
恋してたい
最近は
そんなふうに思うようになった
もう少しで
約束の2ヶ月が終わるのに…
「恋々…好き…
…
近くに…きてよ…
ずっと…一緒が、いい…」
寝言?
寝言でも
今のことがホントだったら
夢でもいいから
今のことがホントだったら
どんなに
幸せかな…
「雨登くん…
…
雨登くんの近くにいたいよ…
…
もう少しでお別れなんて…
ホントはヤダよ…」
思い出が増えるたび
一緒に撮った写真が増えるたび
私の中から消したくなくなるよ