シンデレラは、ここにいます。〜嘘恋〜

夕方の廊下

西日が雨登くんのシャツをピンクに染めた



「雨登くん

好きです

よかったら私と
お付き合いしてもらえませんか?」



今日は

この為に来た



セリフみたいな告白



返事はわかってた



「ありがと…
オレも恋々のこと好きだよ

最初から好きだった
オレから告白するつもりだった

オレでよかったら
よろしくお願いします」



用意されてたみたいな返事



わかってた

絶対フラれないって



わかってた

嘘のお付き合いだって



「雨登くん、ありがとう…
よろしくお願いします」



目の奥が熱くなった



私って

お芝居できたっけ?



雨登くんが手を出したから

雨登くんの手を握った



リハーサルもしてないけど

こんな感じかな?



え…



急に抱きしめられた



「雨登くん…?」



なんで?

抱きしめたりしないでよ



カメラ回ってるから?

番組的に面白くなるから?



わかってた

すべてが仕事だって



わかってるのに

涙が溢れた



「恋々…
好きだよ…」







全部嘘の恋



雨登くんの言葉も

優しく抱き寄せてくれたこの腕も



全部嘘



私たちが卒業するために

私が選んだ

嘘の恋


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