シンデレラは、ここにいます。〜嘘恋〜

「オレ、飲み物買ってくるね
何がいい?」



「私も一緒に行くよ」



「いいよ、オレ行って来る
恋々、座ってていいよ」



雨登くん

私と一緒にいたくないのかな?



「私も一緒に行きたい」



「じゃ、一緒に行こう」



雨登くんは

スマホを見ながら歩き出した



雨登くんの後ろを歩いた



「パーカー雨登くんと同じの買いました!
雨登くん好きです♡
ふたりともかわいすぎます♡
さっきすれ違いました!
ベリーワールド私も明日行きます!」



雨登くんは

コメントを読み上げながら歩いた



棒読みのセリフみたいな言い方が

ホントに仕事なんだな…って実感する



投稿に次から次へとくるコメント



私はね

どーでもよかった



好感度とかフォロワー数とか



私のDMには今日も相変わらず

嫌がらせのコメントがきてる



〔死ね!〕



スマホを見るのが最近怖い



雨登くん

スマホじゃなくて

私を見てよ



「恋々は?
投稿しなくていいの?」



「うん…
雨登くんしてくれたし、私は後でする」



「恋々、今日元気ない?」



「ん?そーかな…
そんなことないよ…
いつもと変わらないよ」



「いつもは、もっと笑ってたよ

カメラ回ってないから?

それとも空がいないから?」



空くんもカメラも関係ない



「どっちでもない…」



「じゃあ、オレといるのつまんない?」



つまんないって

別に何もしてないじゃん



投稿することが目的で

雨登くんずっとスマホ気にしてるし

話だってしない



私のこと知りたいって

いちご組では言ってくれたのに…

雨登くんのことも教えてくれたのに…



「楽しいよ…
幸せだよ…

きっとSNS見てくれてるみんなは
そぉ思ってくれてるよね

それで、いんだよね?」



みんながそぉ思ってくれてたら

いんだよね?



嘘の2ヶ月



楽しいとか幸せとか

期待したら

ダメな気がした



本気で思ったら

ダメな気がした



許されるのは

SNSの中だけ



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