シンデレラは、ここにいます。〜嘘恋〜

「恋々…、恋々…
どーした?
終わったよ」



「あ、ホントだ…
雨登くん、大丈夫だった?」



途中から

いろいろ考えて

上の空だった



「うん…大丈夫…」



「でも、雨登くん顔色悪いよ…」



「じゃあ、手貸して…
恋々の手に掴まってもいい?」



「うん、大丈夫?」



乗り物から下りる時に

雨登くんが私の手を掴んだ



「大丈夫?雨登くん
ごめんね、やっぱり乗らなきゃよかったね」



「大丈夫だよ
オレは楽しかった」



「そぉ?雨登くん無理しなくていいよ
具合悪そうだよ
ちょっと座る?」



「うん…
だって…恋々が、笑ってないから…」



え…



「そんなことないよ…
私…」



「うん…笑ってるよ…

…無理に?」



「無理なんかしてないよ!」



「じゃあ、楽しい?
今日、楽しかった?」



「…」



辛い



一緒にいるのも

嘘をつくのも



今も嘘をついた



ホントは

無理してる

雨登くんが笑ってるから笑ってる



ホントは

楽しいよ!って

心から笑って言いたい



嘘じゃなくて…



「なんか…楽しんだらダメな気がするの
だって、ホントに付き合ってないし…」



本気で楽しんでしまったらね

本気で雨登くんを好きになりそうで

こわかった



「オレさ…
事務所にすすめられて野いちご入学して
すぐ卒業したくてマネージャーに言ったんだ

そしたら
野いちご出てから仕事増えてるから
まだ卒業はダメって事務所に反対されたんだ」



「入学の理由、私と同じ…
雨登くんは、なんで卒業したかったの?」



「恋々は?
なんで卒業したかったの?

卒業したいから
オレに告白してくれたんでしょ?」



「別に彼氏が欲しいわけじゃなかったから…
だから、卒業したかった」



最初の理由はそぉだった



告白した時は

自分の気持ちがわからなくなって

辛くて卒業したかった



「そっか…

オレは…
オレ、彼女がいたんだ

だから、卒業したかった」



え…



うまく息が吸えなかった

掴まれてた手の力が抜けた



この手は繋がっていたら

いけない気がして

雨登くんから離れた



「サイテー…」



自然と声が出た



「だよね…」



雨登くんの声が返ってきた



辛くて卒業したかったのに

卒業してからも

ずっと辛い



「彼女がいるなら
野いちごに入学なんてしなきゃいいし…

私が雨登くんの彼女だったら
雨登くんが他の女の子と仲良くしてるの
画面を通してでも見たくない!」



「うん、だから、すぐに卒業したかった
事務所には言えなかったんだ
彼女がいること」



「いちご組の女の子たちも
本気で雨登くんに恋して
勇気出して告白してたんだよ!
ひどいよ!
みんなどんな気持ちで…」



「それも、わかってる
だから早く卒業したかった

だから…
オレに好意を持ってない子を探した

その子に告白して
付き合うフリして
ふたりで卒業しようって…

そしたら
誰も傷付かないって…」



誰も傷付かない?



雨登くんも

雨登くんの彼女も



雨登くんに恋した女の子たちも



それから

私も?



「誰も…傷付いてないのかな…?」



「…」



「私たちが付き合ってるフリして
ファンになってくれた子たちも騙してるよ」



「うん…」



「それに
ホントの彼女は
私たちのことどぉ思ってるの?

いくら2ヶ月だけでも
一緒にプリ撮って
今日だって一緒に出掛けて
SNSに写真アップして

私だったら、嘘でも許せないよ!」



私だったら…って

私は雨登くんの彼女じゃないのに

バカみたい



「彼女とは、別れたんだ…」



「え…」



「恋々に頼んだ後
すぐ、別れた」



「じゃあ、卒業しなくてもよかったじゃん

私の告白なんて断われば…」



「最初に恋々に頼んだのオレだし…

恋々は、卒業したかったんでしょ

だから、告白してくれたんでしょ

オレは恋々が告白してくれたから
一緒に卒業したかった」



私のため?



そのせいで

雨登くんに告白してフラれた子

私たち嘘カップルのファンの子



みんなを傷付けてる



みんなのせいにして

ホントは自分も傷付いてることを伝えたかった



「サイテー…」



「ホントにごめん…恋々…」



「んーん…雨登くんじゃない…」



「え…?」



「私…

サイテーなのは、私だよ

ごめんね
帰るね…私…

雨登くん、友達まだ帰ってなかったら
まだ遊んで行きなよ」



「恋々…
オレ、今日、楽しかった

オレだけかもしんないけど
恋々と一緒にいれて楽しかった」



嘘…

耳を塞ぎたくなる



雨登くんの声が

冷静に聞けない



「ごめん…」



「恋々は悪くないよ
だから、謝らないで…

ごめん
オレ、自分勝手で…

誰も傷付けてないんじゃなくて
みんなを傷付けてる

ごめん…
1番傷付けたくない人
傷付けた」



雨登くんが言う

1番は誰なのか知らないけど



私は雨登くんの顔も見ないで

帰った



サイテー…




< 86 / 147 >

この作品をシェア

pagetop