不安になったら手を繋ごう。怖くなったらハグをしよう。

僕の名前は牡鹿凪兎（おじかなぎと）。高校三年生だ。

僕の家は会社を経営している。そこそこ大きな会社で、僕はいずれその会社を継ぐつもりだ。だからか、僕に作った高い声で近づいてくる女子も多い。今朝だって……。

「凪兎くぅん！放課後暇ぁ？よかったらぁ、一緒ににぃカフェでも行かなぁい？」

「ちょっと、凪兎くんは私と映画見に行くんだけど！」

「凪兎くんを誘っていいのは私だけよ！ねえ、凪兎くん今日私の家に来ない？」

校舎内に一歩入った刹那、女子に取り囲まれた。女子のつけているコロンの香りが混ざって気持ち悪い。

「悪いけど、用事があるから」

下手に優しくせず、僕はキッパリと断る。だって僕にはもう一生を共にしたいと思える人がいるから……。

「菜月、おはよう！会いたかったよ」

僕は教室のドアを開け、一番最初に視界に入った小柄な女子を抱き締める。セミロングの柔らかな髪に、真っ白な肌、最近コンタクトに変えたその目は大きく見開いている。驚いた顔も本当に可愛い。