不安になったら手を繋ごう。怖くなったらハグをしよう。
僕はまだ震えている菜月を横抱きにし、歩き出す。いつもは驚いた声を出してしまう菜月だったけど、今日は大人しく僕に運ばれていた。

階段を降り、保健室のドアを開ける。保健室の方が落ち着けると思ったから。

幸い、保健室に先生はいなかった。僕はベッドの上に菜月を下ろし、頭を優しく撫でる。

「……いつからあんな嫌がらせされていたの?」

「少し前から……」

まだ震えている菜月を抱き締める。菜月が嫌がらせをされていたことを話してくれなかったのは、胸がモヤモヤする。でも、それ以上に気付かなかった自分が嫌だ。

「気付けなくてごめん」

僕がそう言うと、菜月は「ううん」と首を横に振る。せめてもの償いとしてさっきよりも強く抱き締めた。

「痛かったし、怖かったよね?でも、これからはきちんと話してほしい。だって菜月は僕の大切な人なんだから」

「大切な人?」

僕は菜月をまっすぐ見つめる。胸が高鳴って止まない。こんな気持ちを感じられる人はいない。
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