不安になったら手を繋ごう。怖くなったらハグをしよう。
菜月が部室のドアを開け、僕らの手は離れる。もう少し繋いでいたかったなんていつも思ってしまうんだ。

それからは、パソコンの前に座ってひたすら小説を書き始める。僕が書いているのはミステリーで、菜月が書いているのが恋愛小説だ。

「ここってどうしたらいいと思う?」

「う〜ん……。ここは、主人公の気持ちをもっと表してみてもいいかも」

菜月や他の部員たちと話しながら書いているうちに、もう時計は六時を過ぎていた。夏場ならまだ明るいが、もう冬のため空は暗い。

窓の向こうに見える暗闇に、僕の背筋がゾッと寒くなる。胸に不安が溜まっていき、息ができなくなっていく。

「凪兎くん、大丈夫だよ。私を見て?」

ふわりと抱き締められ、僕の体は温もりに包まれていく。菜月に抱き締められているんだ。菜月の体からふわりと花の香りがして、僕の心を落ち着かせてくれる。

「菜月、ありがとう……」

菜月を見上げれば、僕に対して優しく微笑んでくれている。我慢できなくなって、僕は菜月の顔に自分の顔を近付け、チュッと唇に一瞬触れた。菜月の顔は真っ赤に染まっていき、部員たちは見て見ぬ振りをしてくれる。
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