不安になったら手を繋ごう。怖くなったらハグをしよう。
僕と菜月が付き合うようになったきっかけは、互いに恐怖症を持っているからだった.菜月の照れた顔を見ながら、付き合うようになった懐かしい記憶が蘇る。

僕は暗闇を怖がる暗所恐怖症を持っている。幼い頃、事故で暗い部屋に一晩閉じ込められてからずっと暗闇が怖いと感じるようになってしまった。

高校一年生の頃、遠足で水族館に行くことになった。最初のうちは友達と楽しんでいた。でも、深海魚のコーナーはとても真っ暗で、僕は恐怖を感じてそこから動けなくなってしまった。

周りの人や友達は僕を変な目で見た。でも、菜月だけが「大丈夫?外に行こう」と言ってくれたんだ。その温もりのおかげで、僕は動くことができたんだ。

「ごめん。藤さん、友達と楽しんでいたのに……」

僕が謝ると、「いいの。私、外に出ようかなって考えていたところだから」と菜月は笑って自分に海洋恐怖症という恐怖症があるということを教えてくれた。

海洋恐怖症とは海や川、湖に関する恐怖症で、菜月の場合は鯨やサメなどの海洋生物の写真を見ると恐怖を感じるらしい。
< 5 / 13 >

この作品をシェア

pagetop