不安になったら手を繋ごう。怖くなったらハグをしよう。
廊下を進み、菜月は友達が言ったように空き教室に入って行った。空き教室は先生も生徒も足を踏み入れることのない不気味な雰囲気の部屋だ。

文化祭でお化け屋敷として使われる以外、誰も足を踏み入れないのにどうして?僕はドアの前まで一気に移動し、ドアに耳を当てる。菜月に何が起きているのか、一瞬にしてわかった。

「何であんたなんかが牡鹿くんと付き合ってるんだよ!!」

耳障りな甲高い女子の声がした刹那、パチンッとという乾いた音が響く。菜月が叩かれたのだ。それを嘲笑う声が教室からは聞こえてきた。

「別れろって言ったよね?何で別れてないの?」

「カッターで首をちょこっと傷付けるくらいじゃ足りなかったんじゃない?」

「そっか。じゃあ、あれをやろう」

次の瞬間、「嫌です!やめてください!見たくない!」という菜月の悲鳴が響く。そして女子たちの下品な笑い声がした。

「マジ?ただの海洋生物の怖い雰囲気の写真なんだけど」
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