オレにしか、触らせるな!

先に手を広げたのは

棒くんだった



フワッて

爽やかな匂いと一緒に

私を包んだ



ドキドキ…

ドキドキ…

ドキドキ…



棒くんのシャツを通して伝わってくる

鼓動と体温



「大丈夫だった…?
抱きしめても」



棒くんの優しい声が聞こえた



さっきまで耳障りだった鼓動が

心地よく変わる



「うん…大丈夫だよ

棒くんは?
大丈夫?
怖く、ないの?」



「うん…大丈夫…」



「よかった」



抱きしめてほしかった

触れてほしかった



棒くんの大きな手から

私の背中に熱が伝わる



「棒くん…

ドキドキするよ」



ずっと

誰かに

抱きしめてほしかった



「うん…
オレも、してるよ」



誰かじゃなくて

たぶん



棒くんに…



棒くんに抱きしめてほしかった



ドキドキ…

ドキドキ…



「棒くん…」



「…ん?」



棒くんの温もりを感じる



ドキドキ…

ドキドキ…



「私、人を好きになってみたい」



ドキドキ…



「ぅん…いいと思うよ…」



ドキドキ…

ドキドキ…



棒くんが言葉を発するたびに

胸がギュッてなる



ドキドキ…

ドキドキ…



「棒くん…」



「ん…?」



「好きになっても、いいですか?」



ドキドキ…

ドキドキ…



「それは…友情?
それとも…同情?」



友情?

同情?

どっちかな…



今までにはなかった感情



「…どっちでも…ないかも…」



「…」



棒くんは黙って少し笑った



くすぐったくて

またドキドキした



「オレも、もぉ好きだよ…

好き…

永野さんのこと
ずっと好きだったよ」



ドキン…



熱くなる


私の鼻先で棒くんが香った



ドキドキ…

ドキドキ…



「それって…同情?
それとも…友情?」



ドキドキ…

ドキドキ…



「最初は、同情だったかな…

それが、友情になって…

今は…どっちでもない」



「ん?今は…?」



「今は…、永野さんと同じかな…

同じだったら、いいな…」



同じだったら

いいね



同じだと

いいな



「棒くん…
私ね、ずっと棒くんの友達になりたかった

でも、私は棒くんの
同じクラスのひとりでしかなくて
なんか、悲しかった

でも今はね
友達なんかじゃなくて…

棒くんの…
棒くんの彼女になってみたいです!」



きっと

私の好きは



棒くんと恋愛したいっていう

好き



ドキドキ…

ドキドキ…



友情でも同情でもない



「うん…オレも友達じゃ、嫌だな…

よかった

オレも、同じ好きだった」



緊張してた棒くんが

少し緩んだのがわかった



今度は私が強く抱きしめた



もっと身体が近くなって

もっとドキドキした



「好きだよ…

永野さん…」



私の髪を大きな手で撫でてくれた



「よかった」



棒くんが笑った



「ん?」



「かわいいな…って思ったから…」



棒くんが動くたびに

心がムズムズする



くすぐったくて

気持ちいい



私の初めての恋が

始まった



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