オレにしか、触らせるな!

彼女がいた時は

いつも

その子が1番だった



でも

心のどこかに渉香がいた



忘れたかった

渉香のこと



忘れたフリをしてた



颯に対して

罪悪感があったから…



女性に不信感を抱くぐらい

颯は傷付いた



なのに

オレだけがずっと

渉香を好きでいたらダメな気がした



本当に颯を

裏切ることになる気がした



だから

気を紛らわすために

彼女を作った



彼女が途切れると

また渉香を思い出してしまう



ブランドのバッグを持った渉香に再会した時

オレが好きだった時の渉香とは

掛け離れてたけど

忘れようとしてた渉香を

また思い出した



できることなら

また渉香に恋したいと思った



だからたぶん

次の恋をしなかった

彼女を作らなかった



また渉香に会えるとは限らないのに…



瑠愛ちゃんと結婚して

幸せになった颯を見て

オレも幸せになりたいな…って

少しだけ欲が出た



颯の結婚式の帰り

偶然会った渉香は

オレが好きだった頃の渉香に近くなってて

あー…この人抱きたいな…って

衝動的に思った



渉香とキスしてた中学生の時のオレは

一途でピュアで

そんな度胸も知識も経験もなかった



オレたち

それぞれ大人になったよね



一時的な感情で

渉香と身体を合わせた



渉香のこと

傷付けるとか

何も考えてなかった



渉香に真っ直ぐだったあの頃

オレもオレなりに傷付いたんだよ

だから、別にいいだろ



そんな軽い気持ちだった



ただただ

時を埋めるように

渉香と繋がりたかった



キスしたら

また本気になる気がして

また自分が傷付く気がして

できなかった



大人になんてなってなかった



一途に渉香を好きだった中学生のオレより

ずっと子供だったかも



汚い大人になったことを自覚した



渉香に

忘れて…って言ったクセに

自分は忘れられなくて



渉香を振り切るくせに

近くにいたかった



渉香に会いたいのに

素直になれなかった



渉香と一緒にいたいのに

何か引っ掛かった



幸せにしてあげなよ

颯に言われて

ずっと我慢してた気持ちが

ずっと隠してた気持ちが

報われた



ありがとう





ごめん

渉香



オレ

渉香のこと忘れられない



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