オレにしか、触らせるな!

「あー、ヤダな…
午後から塾だ…」



「小学生って、忙しんだね
奏くんガンバって!」



「暑いから、熱中症気を付けろよ!」



冷やしておいた麦茶のペットボトルを持たせて

奏を送り出した



「棒くん、お母さんみたいだね」



「仕方ない
オレだってやりたくてやってない」



「私も棒くんみたいなお母さんになりたいな

お母さんになるってことは
結婚するってことだよね?
それで出産もするってことだよね?

この前までの私は
そんなことぜんぜん考えてなかったのにな…」



「うん…」



夢中で話す永野さんに

ちょっとドキドキした



「ん?
なんか変だった?私

なんか足りない?

お母さんになるために他にも何かしなきゃ?」



何か…

しなきゃかもね…



「大丈夫…
たぶん、あってる…」



何オレ、ひとりで照れてるんだろ



「よかった」



結婚相手はオレって決まってないし

話が出産まで飛んでるけど

その間にすることはいろいろある



いろいろ…



オレと永野さんは

まだ何もできてない



オレの前の永野さんは無邪気に笑ってる



まぁ、いいか…



なんか

変じゃないよ



なんか

かわいくて



なんか

大好き


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