私しか、知らないで…

ブー…ブー…ブー…



何件かメッセージを返した時

スマホが震えた



紫苑 Sion



黒い画面にあの人の名前が浮かんだ



え…



「あ、はい…」



「ねぇ…」



電話の向こうであの人は笑ってた



「はい…」



「感想長すぎ…」



「あ、スミマセン
嫌いではないジャンルだったからつい…」



「読むの疲れるから電話した」



「スミマセン」



「いいよ
続き、どーぞ…」



そー言われると緊張した



「えっと…」



文章にはできてたことが
言葉にできない



「ん?」



喋らないと電話は切れるかも…



「えっと、あの…
また図書館来ますか?」



「んー、もぉ行かないかな…
卒論書くのに借りただけだから
必要なところ、コピーしたし…」



卒論のために借りてたんだ



「君の感想も卒論の参考にさせてもらうね!」



まぁ、いいけど…



「ねぇ、今何してるの?」



「えっと、家で、今、電話…」



「ファミレスにいるんだけど来てよ!
勉強教えてあげる!」



「え、ファミレスって…」



「駅の裏の…
来たくなかったら別にいんだけどね
暑いしね…」



「行きます
これから着替えて行きます」



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