私しか、知らないで…
3月1日
オレは花屋にいた
「スミマセン
うちでは取り扱ってなくて…
切り花で出してる店舗は少ないと思いますよ
鉢物も今時期じゃないから難しいかも…」
「そーですか…」
ある花を探してた
薄紫色の小さな花
紫苑
この店で3店舗目
やっぱり難しいか…
「あの…」
声のする方を見たら
「先生?
やっぱり、先生!」
「花澤!」
すぐに名前が出てきた
ちょうど1年ぶり
卒業式から1年が経ってた
「先生、水槽に入れる水草?」
「あー、水草じゃなくて
ちょっと探してる花があって…」
「そーなんだ
何かの実験に使うの?」
「いや…
花澤は?何か…」
「うん
花束を買いに…
…
スミマセン
カスミソウを花束にしてもらえますか?
そんな大きくなくていんですけど…
ミニブーケみたいに」
「はい、かしこまりました
他に何かお好みのお花はございますか?
何かのお祝いですか?」
「カスミソウだけでお願いします
私の花なんです
付き合って1年記念に
彼氏にプレゼントします」
そう言った彼女は
キラキラしてて
カスミソウみたいに白くて優しげだった
「朝倉とうまくいってるんだね」
「はい
おかげさまで…」
照れて笑う姿がかわいかった