私しか、知らないで…
今日も紫苑は水槽を覗いてた
「ねぇ、紫苑…」
「ん?なに?」
水槽を見つめたまま紫苑が返事した
「紫苑、幸せ?」
「うん、幸せだよ
なに?急に…」
紫苑が後ろを振り返った
「アパートもぉすぐ取り壊しだろ」
「うん」
「一緒に住まない?」
「え、いいの?
次のアパート見つかるまで
どぉしよーかな…って思ってたの
助かる〜、亜南」
「そ~じゃなくて…」
「ん?」
「オレが紫苑のこと
もっと幸せにできたらいいなって
ずっと考えてるんだけど…
ダメかな…?」
「え…」
「紫苑
紫苑のこと、幸せにさせて…
…
オレと結婚してください」
紫苑の花束を紫苑に渡した
紫苑の花言葉
君を忘れない
それに添えてカスミソウ
紫苑だけだと数が少なくて花束にならないって
花屋さんがカスミソウを混ぜてくれた
カスミソウの花言葉
感謝、幸福
卒業式に花澤が教えてくれた
あの時の花束からカスミソウだけ抜き取って
ドライフラワーにした
まだ窓際に吊してある
今オレが
紫苑にこうしてプロポーズできてるのは
花澤のおかげなのかな…って
一時でも君に恋心をもったことに
感謝してるし後悔してない
「亜南…
ホントに…?
…
ホントに幸せにしてくれる?」
「うん…
幸せにする」
水層の光で花束を持つ紫苑が幻想的に見えた
「フフフ…亜南ぽくない
…
亜南にこんなシチュエーションで
プロポーズしてもらえると思ってなかったな
…
プロポーズなんて
絶対ないと思ってた」
水層の音と光
それから紫苑
オレの好きな空間
「オレっぽくないって、なに?
よくわかんないけど…
…
でも紫苑に出会ってなかったら
誰かを好きになったり
誰かを幸せにしたいとか
思ってなかっただろうな…
…
オレじゃなくさせたのは
紫苑だよ
…
でも、まぁ
夢中になるとそのことばっかりになるのは
相変わらずオレっぽいよね」
「うん…
好きなことを話すと止まらなくなるところね
…
亜南…
ずっと私に夢中でいてね」
頬を両手で包まれた
「うん…
紫苑しか見えない」
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「私でよかったら
亜南の奥さんにしてください」