私しか、知らないで…

観覧車に乗った



「スゲー!久しぶりに乗った」



「うん…」



「オレんち見えるかな?
さすがに見えないか…」



「うん…」



ん?

花澤、喋んない



「どーした?花澤」



「私、初めて観覧車乗った

高いのダメかも…」



「え、マジ?」



花澤が両手で顔を押さえた



「え、そんなに?」



「うん…ごめん…」



「ごめん…オレこそ
知らなくて…」



「うん…私も知らなかった」



「そっち行ってもいい?」



花澤が座ってる方に移動した



「キャー…揺れてる」



「あ、ごめん…
もぉ揺らさないようにする」



「今、どの辺?」



「んー…もぉ少しで天辺かな…
まだ…もぉ少し…」



「…」



ずっと顔を押さえてた



「手繋ぐ?
そしたら少し安心する?」



「無理無理無理…
顔から手離せない」



「目閉じてたらいいじゃん!」



「んー…無理…」



「そんな、こわい?
なんか、ごめん…
オレが乗ろうって言ったから…」



「んーん…」



花澤はずっと顔を押さえてた



オレはずっと外を見てた



せっかく乗ったのに…

せっかくふたりきりなのに…



もぉ下についちゃうな



「ねぇ…
顔隠してると…できない」



「…ん?」



「手が邪魔で…キスできない」



「え…」



花澤が顔から手を離して少し目を開けた



一瞬目が合った



「目、開けなくていいよ…」



花澤の手を握って



ーーー



キスした



「こわくない?」



「うん…
手、絶対離さないでね…」



目を閉じたまま花澤が言った



かわいいよ

かわいいよ花澤



ダイエットなんかしなくても

メイクなんかしなくても

かわいいのに

まだかわいくなろうと努力する花澤も

かわいい



また、したくなる



「もぉ1回してもいい?」



「うん…」



ーーーーー



ヤバ…

マジかわいい



「北翔、もぉすぐつく?」



「うん、もぉすぐ…
でも、目まだ開けないで…」



きっとまた耳赤いから



花澤に見られたくなかった



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