私しか、知らないで…
「あ、花束!
あの人たちは
今日、卒業式だったんだね」
帰りの電車の中
花束を持ってる人を見て
花澤が言った
「そーだね」
「北翔、ちょうどふたり座れそうだよ」
席が空いて
ちょうどふたり座れたけど
映画館より
さっきの観覧車より
近かった
ずっと身体が触れてて緊張する
「ねぇ、北翔
あの花束の白い小さい花
なんていう花かわかる?」
花澤がオレの耳元に小声で聞いてきた
かわいい♡
「ん?ごめん
オレ、花の名前とかわかんない」
「カスミソウって言うんだよ」
「へー…カスミソウ?
かわいい花だね」
ホントは花澤にかわいいねって言いたかった
「うん、カスミソウ
花言葉は感謝、幸福」
「へー…」
それも藤森から聞いた雑学かな
少し面白くなかった
「北翔、興味ないか…」
そっけない返事をしたオレに
花澤は少し残念そうな顔をした
「んー…別に…」
どーしても藤森が頭を過ぎって
適当に返してしまった
「ソウをとって発音してみて!」
「なに?なんかのクイズ?」
「いいから!」
「カスミソウ…?
…
ソウ…
…
カスミ…
…
カスミ…
…
カスミ?」
「うん
やっと呼んでくれた!」
花澤が嬉しそうにした
「え…
あ、カスミ…?
…
カスミ!!」
「シー!北翔、声大きいよ」
「楽しそうでいいわね」
隣に座ってるオバサンに笑われた
「私の花…カスミソウ
どんな花も引き立てることができる花
私の名前の由来」
「そーなんだ…」
藤森の雑学じゃなかった
ごめん
「興味ないか…」
「興味なかったけど
教えてくれてありがと
好きな人のことは何でも知りたい
いい名前だよね
香澄って…」
隣で嬉しそうにしてる花澤
たぶんオレ
また…
「北翔、耳赤い!」
花澤がオレの耳を触った
「やめろって…」
またオバサンに笑われた
花澤と目が合った
「もっと赤くなるから、やめて…
ここ、電車だしみんな見てる」
小声で花澤に言った
「ごめん…もぉしない」
それから花澤はずっと黙ってた
おこった?