私しか、知らないで…
「北翔」
「ん?」
香澄がオレの耳を触ってきた
「また赤い?」
香澄に耳を触られるのも
もぉ慣れた
「んーん…
北翔の耳、好き…」
最初は触られると
からかわれてるみたいで嫌だった
「北翔…好きだよ…」
香澄がオレの耳元で囁いた
「北翔…ずっと一緒にいてくれて
ありがとう
…
これからも、大好き…」
唇が耳に触れた
いつもより身体が近くて
香澄…
ドクン…
「香澄…まだ、怖い?」
「ん?もぉ大丈夫だよ
ごめんね、ありがと…」
「オレと、するの…怖い?」
ずっと香澄に触れたくて
でも怖いのかな…って遠慮してた
キスするのが精一杯だった
「…こわくないよ…」
「キス、じゃないよ…」
「…うん…」
「無理してない?」
「うん…
北翔なら…大丈夫だよ
…
北翔じゃなきゃ…ヤダ…」
ーーー
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北翔じゃなきゃ
ヤダ
ーーー
「香澄…オレも…
…
香澄がいい
…
香澄しかいないんだ、オレ」
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「うん…
北翔、少しだけこわいから、ずっと手…
離さないで…」
「うん…離さないよ」
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こわいとか言う香澄が
すごく弱い生き物に見えた
一緒に真っ黒になってサッカーしてたのに…
ラーメン大盛り食べてたのに…
今
オレの目の前にいる香澄は
オレが知らなかった香澄で
ひどく愛しくて
たぶん
オレしか知らない香澄なんだと思う
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「北翔…」
「ん?」
ずっと握ってた手を
香澄が握り返してきた
「ずっとしたかった?」
「え?」
「ずっと私と、こーしたかった?」
「そんなこと…聞くな…
…
香澄…好きだよ」
ーーー
ーーーーー
「うん…
…
北翔…
…
全部、好き…」
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重なった手と手
触れる肌と肌
全て愛おしくて
全部オレのもの
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ーーー
「北翔、こっち見てよ…
…
北翔の顔、見たいよ…」
「ん?」
「…変わらないけど…
変わったよ
…
この手も…
声も違うし…
身体も…
…
でも大好き
どんどん好きになってく
…
変わっても変わらなくても…
…
北翔が、大好き」
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こんなに愛してくれる香澄に
ヤキモチ妬くヤツがいたら
相当バカだな…って
香澄の目を見て思った
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香澄は
オレしか見てなかった
「香澄…好き…
…
…愛してる…」
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