私しか、知らないで…
「あ、アイス、とけちゃったね…」
テーブルにあるアイスを見て香澄が言った
真っ黒だった香澄の肌は
アイスみたいに白かった
「今日ね
私も花束買いに行ったの」
「花束?」
「うん
北翔、花に興味ないって言ってたけど…
…
ハイ…
今日、付き合って1年記念日だよね?」
小さくて白い花がいっぱいの花束
「カスミソウ」
「うん
…
他の花は知らなくても
この花は知ってるでしょ
…
ずっと忘れないでね
…
私しか知らないでね」
「なに?
プロポーズ?」
「うん、そぉかもね」
香澄が笑った
「え、待って…
オレのタイミングで言うから…
え…?
あ…」
プロポーズなんて
まだ先かもしれないけど
オレはずっと香澄しか知らなくていい
香澄も
そう思ってくれてたら…
その時は
今日より大きいカスミソウの花束を
花屋さんに注文する
どんな花も引き立てるんじゃない
それだけで
それだけで花になるような
香澄がいるだけで
幸せになる
香澄はオレにとってそんな存在