私しか、知らないで…
「花澤、大丈夫?」
電車の中で手を繋ぎながら
時々北翔が聞いてくれた
「ん?なにが?」
「ん?いろいろ…
元気?」
「うん、元気だよ」
「じゃあ、笑って見せて」
「ニッ…」
「嘘っぽい!
ホントに笑えよ!」
「じゃあ、北翔なんか面白いこと言ってよ!」
「んー…
今日、前田が昼休みに…
あ、やっぱやめた
…
数学の大嶋がさ2限に…
あ、やっぱやめた
…
生物の時間、藤森が…
…
あ、やっぱ
最後、1番反応したね
…
まぁ、いいや…」
「で、なに?
面白い話って…」
「ん?
面白い話なんてなかった
…
花澤を試しただけ
ごめん…」
大丈夫だよ
北翔
いつも心配してくれてありがとう
「北翔、元気だよ」
私が笑うと北翔は嬉しそうな顔をする
その顔が私は見たくて
ずっと笑顔でいたいなって思うんだよね
「なに?
こっち見んな!
余計なことばっか考えてると
受験落ちるぞ!」
「えー!そんなこと言わないでよ」
「わざと落ちて
また来年も藤森のクラスに
なろうとしてるとか?」
「え!そんなことできるの?」
「できるわけないだろ!バカ」
いつも私を守ってくれる北翔の手
あと何回繋げるかな?
バカって言っても
その手は優しくて
その手は
いつも
私に何か伝えたそうに
私を包んでくれてる
ありがとう
北翔